オペアンプを用いた片電源反転増幅器

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1.はじめに

この文書は,センサ出力をマイクロコンピュータのADコンバータに取り込むため,片電源オペアンプによる電圧増幅について解説する文書である。

通常の反転増幅器は,オペアンプと正負量電源を持ち,0Vを中心とする微小電圧を増幅するが,ここでは片電源5Vを用いて,2.5Vを中心とした微小電圧を増幅する方法を解説する。

なお,ここで用いるオペアンプはレールツーレール性能を持つものとする。(現実のオペアンプは電源電圧までの電圧を出力することはできない)

 

2.オペアンプを用いた反転増幅器 (正負両電源,信号オフセットなし)

図1は正負両電源を用いるオペアンプを用いた反転増幅器である。図のようにオペアンプの出力が「−」入力に抵抗を介して接続されている回路は「負帰還」と呼ばれる。負帰還を持つオペアンプには次の性質がある。

(1)入力端子の入力インピーダンスは大きく,電流は出入りすることはできない。
(2)「+」「−」の2つの入力は同じ電圧に保たれる。(イマジナリショート)
(3)出力インピーダンスが大きく,出力端に付加された外部負荷によって影響を受けない。


Vin,Vout,P,Qは電圧
i1,i2は電流
R1,R2は抵抗

図1 オペアンプを用いた反転増幅器 (正負両電源,信号オフセットなし)

図1において(1)よりi1=i2=iとなり,(2)よりP=Qとなる。したがって次式が成り立つ。

i,P,Qを消去して次式を得る。

この式は,微小入力電圧が−R2/R1倍されて出力電圧となることを示している。この様子を図示すると図2のようになる。

図2 反転増幅器 (正負両電源,信号オフセットなし)の増幅

 

3.オペアンプを用いた反転増幅器 (正片電源,信号オフセットあり)

片電源のオペアンプを用いた増幅は,マイナスの電圧を扱うことができない。しかし,マイクロコンピュータのADコンバータなどは負の電圧が扱えないのでむしろ,この方が都合がよい。

図3は正片電源を用いるオペアンプを用いた反転増幅器である。図のようにオペアンプの出力が「−」入力に抵抗を介して接続されている回路は「負帰還」である。負帰還を持つオペアンプには次の性質がある(再掲)。

(1)入力端子の入力インピーダンスは大きく,電流は出入りすることはできない。
(2)「+」「−」の2つの入力は同じ電圧に保たれる。(イマジナリショート)
(3)出力インピーダンスが大きく,出力端に付加された外部負荷によって影響を受けない。

図3 オペアンプを用いた反転増幅器 (正片電源,信号オフセットあり)

図3において(1)よりi1=i2=iとなり,(2)よりP=Q=E1となる。したがって次式が成り立つ。

i,P,Qを消去して次式を得る。

ここで

は,( x0,y0 )を通る,傾きkの直線を表していることを考慮する。

そうすると,この出力電圧は,E1を中心とした微小入力電圧が,同じくE1を中心として増幅されたものになることを示している。

この様子を図4に示す。

図4 反転増幅器 (正片電源,信号オフセットあり)の増幅

図3の回路は,E0の電圧から抵抗分割によって作られたE1を用いても作ることができる。

図5 オペアンプを用いた反転増幅器 (正片電源,信号オフセットあり)